6月21日は「世界ALSデー」。筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)という進行性の難病への理解や当事者への支援、治療法研究の促進を世界中で呼びかける日です。
アメリカ留学を経てメキシコシティで歯科医として活躍していた最中の2011年にALSの診断を受け、現在は千葉県で一人暮らしをする松村恵美子さん。
難病の告知を機に人生は一転しましたが、現在は重度訪問介護など複数の医療福祉サービスを利用し、課題は抱えながらも千葉県で一人暮らしを続けていらっしゃいます。
松村さんは、手足を動かしたり発話でのコミュニケーションはできませんが、まばたきと、眼球の動きだけで、視線入力装置を巧みに操りパソコンに文字入力ができます。
社労士資格を取得して働くために、現在試験に向けて勉強をされているという松村さん。
また、将来は「視線入力の小説家」になることも夢だそう。
24時間365日、介助者の支援を受けながら暮らすことを前提に工夫が施されたお住まいには、互いが快適に過ごし、難病当事者が自分らしく生きるためのヒントが詰まっていました。
ALSと共に前向きに生きる松村さんは、ユースタイルケア 千葉 重度訪問介護の利用者様です。
松村様のお宅を訪ね、ユースタイル広報がインタビューさせていただきました。
ALSと共に生きる人生がスタートして

ユースタイルラボラトリー広報(以下、広報): 本日はありがとうございます。松村さんは視線入力でこんなにも素早く文字を打てるんですね!
松村恵美子さん(以下、松村): はい、このパソコンは2台目になります。2020年から使い始め、6年目です。視線入力装置に慣れなくて使わない方もいると聞いたことがありますが、お勧めですよ。
広報: 松村さんは視線入力で現在小説を書いていらっしゃることを、SNSで拝見して驚きました。作風もテーマも違う様々な作品を書いていらっしゃるんですよね。

松村: 文章を書くことが好きなんです。TALESという小説サイトで現在4つの物語を発表しています。少しベタかもしれませんが、ALSという難病であっても「夢をあきらめない」という姿も、物語とともにお伝えできればと思っています。
広報: ALSの診断を受けたのはいつだったのですか?
松村: 2011年8月でした。メキシコのメキシコシティにいた時です。アメリカ留学を経てそれまで歯科医として海外で働いてきましたが、ALS罹患をきっかけに日本に帰国しました。
広報: 日本に帰国されてからはどんな生活を?
松村: 神奈川の施設、千葉の施設を経て、2022年にここで一人暮らしを始めました。病気になったからといって社会参加をあきらめたくないので、現在は社労士の資格をとって事務所を開きたいと思い勉強中です。
メイクセラピストや四柱推命鑑定士の資格ももっているんですよ!
広報: 重度障害・難病者の方はお仕事をあきらめる方も多いと聞きますが、松村さんは罹患前と変わらずアクティブにチャレンジを続けていらっしゃるのですね。
松村: 人の困りごとを一緒に解決したり、人を元気づける仕事に惹かれますね。人とおしゃべりをするのも大好きなんです(^-^)
重度訪問介護を知らない人のために情報提供を続ける
広報: 松村さんはALS当事者として「重度訪問介護という制度を理解する会」という当事者団体の代表や、「NPO法人境を越えて」でも活動をされているんですよね。
松村: 私は24時間365日重度訪問介護サービスを利用することで、自分らしい生活を取り戻しましたが、この制度についてはまだまだ知られていないと感じています。
重度身体障害があっても、一人暮らしも、社会参加もできます。でもそれは“知っているかどうか”で大きく変わります。
制度を知っていれば、所得に応じた軽い負担で利用できる場合があります。
一方で、支給時間の不足や外出時の支援など、当事者が自己負担を抱える現実もありますが。
難病の人が「地域で生きる」をあきらめなくてよいよう、重度訪問介護の認知とヘルパー育成を通して、多様性を尊重しあえる社会づくりを目指しています。
勉強会・情報交換・地域への啓発など、活動は多岐にわたりますね。地元議員さんの集まりにも参加しています。

広報: 私たち事業者としても、福祉業界内ですらまだまだ重度訪問介護が知られていない現状を痛感しています。私たちも、松村さんを見習ってもっと情報発信に努めなければ!
24時間、誰にとっても快適な家「Mi casa es tu casa」

広報: 松村さんのお宅は、壁紙がお部屋によって違ったり空間がゆったりして、とてもリラックスできます!そして、随所に工夫がされていますね。
松村: スペイン語で「Mi casa es tu casa」という言葉があって、「自分の家のように過ごしてね、自分の家みたいにいつでも来てね!」という意味をモットーにしています。
重度訪問介護の事業者さんだけでもユースタイルさんを含めて4社来てくれてますし、生活介護や訪問看護なども含めて、常に人が出入りする家ですからね。
広報: 24時間365日、サポートチームの皆さんと共に暮らすことを前提に、お互いが快適に過ごせるよう設計されているんですね。





ALS当事者と支援者が感じる困難と壁をいつか越えて

広報: 先日、当社で実施した『ALS患者の在宅支援に関する実態調査アンケート』にも、拡散のご協力をいただきありがとうございました。
おかげさまで全国約500名の皆さんから回答をいただき、結果をまとめることができました。
ALS患者への「意思決定支援」と「コミュニケーション」に難しさがあることがわかりました。
松村: はい、結果を拝見しました。意思決定の中でも「気管切開をするか」は、本人と家族にとって非常に重い決断ですよね。
(補足:ALSにより自発呼吸や痰を排出する筋肉が衰えると、呼吸や排痰ができなくなります。気管切開をして人工呼吸器をつけることで、呼吸は可能になりますが、平均30分~おきの喀痰吸引が必要になり、発話と口からの食事が難しくなります。
24時間体制の支援が必要になるため、家族への負担や地域の支援体制への不安から、気管切開を選択できない、あるいは迷う当事者もいます。)
ALSでは、呼吸筋の低下により、病状が進むと人工呼吸器の使用を検討する時期が訪れます。気管切開をして人工呼吸器を選択する割合は国によって大きく異なり、日本では約3割とされる一方、欧米では5%未満と報告されています。
これは単なる医療選択ではなく、本人の意思、家族の介護負担、在宅支援体制、制度の利用可能性に深く関わる決断です。
気管切開をするかどうかは、「生きたいかどうか」だけで決められるものではありません。24時間の支援体制、家族への負担、地域で暮らせる制度や介助者の確保があるかどうかによって、選択できる命と、選択しにくくなる命があるということです。
広報: 気管切開をして人工呼吸器をつけるか…。
難病ALSを受容すること自体も簡単ではない中、支援環境を整えられるかによって命の選択が変わってしまう重圧は想像を絶します。
松村:だからこそ、生きることをあきらめないで、重度訪問介護が使えることを知ってほしいです。また、当事者としては”支援時間不足”や“地域移行の壁”についても、課題を感じています。
広報: アンケートでも、行政の介護支給決定がなかなかおりなかったり、決定が遅かったりして、病気の進行スピードと合わないことや、地域に情報がなく「自宅で今まで通り暮らしたい」という当たり前の希望が叶いにくいとの声が多かったです。
松村:一方でALSの当事者は、皆さん悲観的ではなく前向きな方がたくさんいます。
一歩も外に出たくないと思う日もあるかもしれないけど、自分の人生を生きようとしています。
「障害の有無にかかわらず、それぞれが自分の人生を生きられる社会」を目指していきたいです。
広報: 当社も地域の関係者や他事業者さんと連携し、ALS患者の皆さんの一人ひとりの隣で、しっかり生活をサポートしていきたいです。
松村: 重度訪問介護は(一人ひとり違う障害・難病者に伴走する)正解のない仕事。これからも一緒に生活をつくる一員であってほしいです。これからも「重度訪問介護という制度の認知が広がること」を願いながら活動していきます。
広報: 本日はありがとうございました。
ユースタイルケア重度訪問介護も、全国のALS患者さんとその支援者の環境が少しでもよくなるよう、情報公開をしたり、行政への提言をおこなってまいります。
(インタビューここまで)
重度障害・難病ケアのユースタイルラボラトリーが運営する「ユースタイルケア重度訪問介護」では、2014年に重度訪問介護サービスをスタートして以来、全国のALS患者様へ重度訪問介護サービスを提供してまいりました。
これまでに、国内最多※となる1098名の方に441万5127時間(※2026年5月現在)重度訪問介護を提供し、累計サービス提供回数は79万回となりました。※国内事業者公表数値より自社調べ
1000人を超える方々の人生の大切な時間にご一緒させていただき、79万回のサポートをお届けできましたが、まだまだ重度訪問介護を待っている方がいます。
松村様のように、すべてのALS・難病の方々が、社会参加をしながら自分らしく在宅生活を送れるよう、今後も尽力してまいります。
